どうしてそこまで落ち込むのか…と思えば、不合格だったらお見合いをさせられることになっていると言う。
父親の会社を存続させる為に好きでもない男と見合いして結婚させられるんだ…と嘆いた。


「そんなの身売りと同じじゃん!」


絶対に幸せになんてなれない。馬鹿みたいなことに乗せられるな…という思いで止めた。


「仕方ないのよ…」


短大を卒業した時点で職も決められなかった明香は、資格試験にも落ちて、自分に対する自信をすっかり無くしていた。


「退校手続きに行くね」


俺には頑張って…と伝え、事務所に向かって歩きだす。
目尻に涙を浮かべながら、肩を落としていた。


悄気た背中が悲しそうだった。
「よろしく」と照れくさそうに声をかけてきた日のことを思い出し、思わず彼女のことを止めた。



「ーーー俺がいる!」


後先も考えなかったけど、行かせたくなかった。
明香のことを見て触れるのは、自分だけがいいと思った。


奪った唇の感触は忘れたことがないほど鮮明な記憶として今も脳内に刻まれている。
「引き受ける」と言った言葉も、自分なりに責任を取るつもりで言った。


明香は俺の言葉に感化されて、用意されていた見合い話を蹴った。
両親からどうするんだ…と迫られて、「彼と暮らす」と言ってしまった…と告げられた。


「……ごめんなさい。勝手な言い訳だったよね」