(激ヤバにマズい。マジ好みだ)


資格を身に付けに来た場所で、資格よりも先に好みの女を見つけるとは不覚。
女よりは職!とにかく仕事に就いて金を稼がないとマズいんだけど……。


(……でも、少し得した気分を味わうのもいいか)


大学を卒業して就職した会社が倒産したのは先月の末。吸収合併の話を蹴ったら、あっという間に負債が増えた。



『やってらんねーよな』


同期で入った奴等は早々に退職していった。
俺は唖然とするばかりで、気づくと逃げ遅れていた。


(挙句がこの生活だよ)


コンビのバイトをしながら救済措置として早めに支給された失業保険で食い繋ぐ日々。
そんな中で当たり外れの無い職に就こうと、パソコン教室に通い始めることを決意した。

ーー要するに逃げの行動を取った先で出会った桃山明香とは、資格取得の為に頑張り合おうと話した。


通いだして4カ月後に出た結果が俺たちの距離を縮めることになった。
国家資格を取得した俺は教室から事務処理の仕事を紹介して貰え、落ちた明香はもう一度受講し直すか退校届けを出すかを決めなければならなかった。


『いいなぁ』と話す明香の目は曇っていた。
あんなに頑張ったのに点数が足らずに落ちたことを心底悔しがってるんだろうと感じた。

励ますように「また頑張ればいい」と言ったけど、彼女のやる気はまるで湧く雰囲気じゃない。
むしろ低空飛行状態にまで落ちていき、言葉少なく息を吐いた。