「その子もいろいろと性格には難ありだけど、いい人と恋をして欲しいと願うわ。そうは言ってもあの調子じゃ、一生独身かもしれないけど」


笑いを噛み締めて話すから可笑しくて3人で声を忍ばせて笑った。


お昼の休憩が引けて厨房に戻ると、白瀬さんはカウンターでの接客を止めて座ってる。
どうやら菅さん達に大人しくしておくように…と言われたようで、つまらなさそうな顔をしていた。


お母さんはその後も「ちゃん」付けで彼を呼び続け、白瀬さんはその度に「止せ!」と言い放った。

じゃれ合う親子の様子を見ながら私は思った。


両親が許す恋をした方がいいんだろうか。その方が結局は幸せになれるんだろうか…と。


(これからのことも含めて、厚哉と会話した方がいいのかな)


言いたいことも言えなかった言葉も含めて、全部を声に出してみようかと思う。
それがどんな結果になっても今のこの状況よりかは、少しだけマシな未来が近づいてくる気がする。


(……うん…そうしよう)


外に向けた視界の中に降り出した雪が見えた。
私達の明日は晴れかどうかわからないけど、嵐でなければいい。



(厚哉に気持ちを伝えるんだ。白瀬さんのように、好きだと素直に声に出してみよう)


思う恋がどんなに不安定でも変わらない想いが胸にある。

私を「引き受ける」と言ってくれた厚哉に恋をし始めた頃の気持ちが、胸の奥を駆けるように過ぎていった……。