大好きな彼氏と一緒に暮らす。

「結婚」という名の縛りがない「同棲」という関係には、憧れみたいなものがあったと思う。

けれど、好きだという感情だけでは生活はままならないんだ…と知ったのは、彼との生活が始まって直ぐのことだった。




「家賃と光熱費、折半で出そう」


そう言われて「へっ?」と首を捻った。
唖然としている私に近寄り、彼氏の厚哉(あつや)がもう一度言う。


「家賃と光熱費、折半ね」


(何故?と言うか、どうやって?)


頭の中が真っ白になってる私を気にもかけず、厚哉は食費も半分ずつ出し合おうと提案する。


「…ちょっと待ってよ」


彼の提案を阻止して、もう一度言われたことを頭の中で噛み砕いてから聞いた。


「一緒に住もうって言ったのは厚哉だよね?なのに何故私が家賃も光熱費も折半で払うの?」


ずっと実家暮らしで一人暮らしもしたことのない私。
何も知らない世間知らずな私を彼女に決めた厚哉の方も、今更ながらの現実を思い知ったようだ。


「だって、その方が生活が楽だろ?お互いの遊ぶ金もできるしさ」


これまで誰かに養ってもらう生活しかしてこなかった私に、楽だの遊ぶお金だのの心配は持ち合わせていない。


「……でも私、仕事してないよ?」


混乱する頭の中で、一つだけ逃れる方法を見つけた。


「そこ。そこなんだけどさ…」


近寄ってくる厚哉の顔にドキッとする。