「ねぇ、一輝君の家はどこなの?」
「あぁ、えっとですね・・・電車で三駅先です」
「え、そうなの?私も同じ!やった!」
「そ、そうなんですか・・・」
別に僕にとって喜ばしいことではないが、美川さんが嬉しいのならいいか。
だんだんと、「好き」に近づいてく。
今は「嫌い」でも「好き」ではない。
(これは恋愛感情としての好き、嫌い。だから人としては好きだけど、彼女にしたいと言われるとそうではない)
「それとー・・・」
「?」
美川さんは何かを言いたそうにしていた。
頬を膨らませて、拗ねている子供のよう。
「その・・・”美川さん”って嫌いなの。しずって呼んで」
こうゆうときは・・・言ってあげるべきなのだろうか。
・・・・・
あんなことにはもうなりたくないのに。
「わかりました。”しず”と呼びますけど、さんとか先輩はつけますからね」
「うん、分かった」
にこっと笑う顔を僕は見上げていた。
駅について、本屋の前でしず先輩は止まった。
「あ、私ね、ちょっと欲しい本があるんだ。初めての下校なんだけどごめんね?また、明日ね!」
「はい」
手をふって、笑顔で見送ってあと、一人で改札を抜けて、電車に揺れた。


