今思えばあの時連絡先でも聞いておけばもっと仲良くなってたじゃないかなと思う。
未だにあの時のことは後悔している。
でも今更遅い。
彼女のクラスは知ってるけど名前は知らない。
名前を知っているところで連絡先を聞き出す勇気なんてない。
卒業までこのまま見ていることしかできないんだと思う。
そんな俺は男としてどうなんだろうとつくづく思う。
地平線を眺めながら俺はあの子の顔を思い浮かべた。
夕焼けが眩しい。
メールが来た。
「沖縄ついた!」
旅行を楽しんでるようだ。
メールの返信を返そうとしたとき左側に人の気配を感じた。
ふと左側を見ると…
「あ…」
その子がいた。
「あ、飴玉くれた人!」
あの時と同じ笑顔を俺にプレゼントしてくれた。
「ありがとう、あの時のチョコ」
「うん!確か海真くんだよね?」
名前を知ってることに驚いた。
「え、なんで知ってるの!?」
「有名だよ。かっこいいって!」
「いやいや。そいえば名前なんて言うの!」
「陽夏だよ」
「あんま聞いたことない名前」
「よく言われる」
やっと名前を聞き出すことができた。
ちゃんと会話もできた。
それだけで嬉しかった。
この際連絡先も聞いてしまおうか。
そんなことが頭をよぎったが、やっぱりそれはできなかった。
「海真くんここで何してたの?」
「友達が旅行行っちゃってさ、することなくてぼーっとしてた」
目を合わせることができない。
心臓は飛び出そうだ。
「そうなんだ。私も同じような感じ」
「うん」
会話が続かない…。
こんなに話すのって難しかったっけ。
なんか話さなきゃ。
「あー…寒くね?」
「え!?今夏だよ」
「あ…そうだった…」
俺、何言ってんだろ。
恥ずかしくなって、自分でも顔が赤くなったのが分かった。
「海真くん面白いね」
「あ、俺…そろそろ行かなきゃ!あれだ、あの…用事あるんだわ!」
耐えられなくなって俺はその場を走り去った。