私のクラスの仕事は、入学式の会場にパイプ椅子を並べること。

20分もすれば仕事の終わりがみえてきて、少し疲れた私は、パイプ椅子を両手に立ち止まって辺りを見渡した。



椅子が整列する体育館。
その中で一番目立つのは、やっぱりステージの上だ。
視界にそれが入ると、一年前の記憶が甦る。



私は去年、そこで代表挨拶をした。


そこから見える皆の表情は、少しの不安と大きな期待で溢れていて、私もきっと同じ顔だったと思う。



望月財閥のお嬢様というレッテルと柔らかい雰囲気から産まれた、『お姫様』という印象。



地元から離れた高校なら、そんなフィルターなしで見てくれる人が沢山いるはずだって、私は思っていた。