彼女の名前は望月姫花。

自分の家系が代々仕えてきた、望月財閥のお嬢様だ。



「ユウ、これあげる」


「…え、これはちょっと…」



渡された可愛らしい貝殻のヘアピンに、幼い頃の自分は戸惑った。
こういうものは、自分が付けてはいけないもののように感じていた。



「慣れないのは分かるけど、これを見たとき絶対ユウに似合うとおもって…、

…つけちゃ、だめ?」



桃色のワンピース、ふんわりと揺れる長い髪、おっとりとした柔らかい口調…

そんな甘さと優しさを詰め込んだような彼女が、大きくて瞳で私を見上げる。



…こんな可愛いお姫様のお願いを、断れるはずがない。