そんな私の腕を彼は離したかと思うと、そっと手を取った。



「俺、君のこと気に入っちゃった」



そう言って視線を交える王子様。
その瞳に浮かぶのは、さっきよりも濃い楽しげな色。

…………何故だろう、嫌な予感がする。



「そうですかではさようなら」



危機感を感じて早口でそう言うけれど、彼は離してくれない。
さっきは優しさの残った力だったけれど、今回はそれすらない。
失うものは何もないと思っていたけれど、これは立場とかそれ以前のものを持っていかれそうだ。

……やばい王子様甘くみてたかも…


だらだらと嫌な汗が流れるなか、王子様は今までで一番綺麗な笑顔を浮かべた。



「ねぇあの写真、家以外にもばらまかれるのは嫌だよね?」



笑顔でぶっそうな脅迫をする彼。
そんな状況から助けてくれる人は、ここにはいなかった。