「…………大丈夫?」
とりあえず、嵐は去った。
少しだけ我に返り、彼の方を向く。
「うん」
「んな訳ないじゃん。弁当の中身ダメにした上に、箱ぶっ壊されてるし」
彼は不機嫌そうに目を細める。
「別に。昨日の残り詰めただけだし、壊されたってまた買い直せばいい」
「……ふぅん」
私が弁当の残骸を片付けている間、彼はスマホをいじっていた。
指先が忙しそうに動いている。
「……そういえばさ」
「ん?」
「錬登、動画撮ったって言ってたよね」
ふと思い出したことを口にしたら、あぁと言ってスマホをポケットにしまう。
彼らしい、いつもの顔がそこにあった。
「あれ嘘だよ。……脅し文句ってゆーの?アイツら真に受けてさ。血相変えて慌ててたんだぜ?ホンット、面白いったらありゃしないよ」
アハハっと心底愉快そうに笑い、片付け終わった私と向かい合う。
「さっきの3人、中山と小林と田野な。ボクとおんなじクラスなんだよ。アイツら、男バレ好き過ぎるみたいだからさぁ、気をつけろよ? ……まぁ、もう二度とあんな事はしないだろうけどねっ!」
…………そうなんだ。
軽く相槌を打って、中庭へ向かう為に足を進めた。
みんな、お腹空かせてるだろうしね。
