蒼大side
「やっと終わった!」
俺は両手を上に突き上げた。
昼休み開始から、既に5分が経過していた。
やっと社会の授業が終わったのだ。
「蒼大くん、早く行こう!」
同じクラスの女バレ、宮塚桜に声を掛けられ、弁当を持って大急ぎで中庭へ向かった。
「んもう、遅いわよ! 蒼大に桜」
中庭に着くなり、滝本伊織からお叱りを受けた。いつもはもっと早く着いているからだろう。
「ごめん伊織ちゃん……」
「さっきの時間社会だったからなぁー」
「あ、太田先生でしょ?あの人50分で授業終わらせられないもんね」
そう共感してくれるように言うのは、池内莉子。マジいい人。
「あとは雅だけだね」
……本当だ。今日は俺たちだけでなく雅も遅い。何かあったのだろうか。
「おい雄輝。何故雅と一緒に来なかった」
杉崎秀介が眉間に皺を寄せた。それとは対照的に、問われた雄輝はポカンとしたマヌケヅラだ。
「……んーとな、何か他の女子に話しかけられて、そのままどっか行った!」
「こんのアホが!!」
「痛え!!」
答えが返ってきたと同時に、パァンといい音が。もちろん秀介が雄輝を叩いたのだが、このかけ合いは日常茶飯事である。
……あれ?
「他の女子とどっか行った?雅ってそう誰とでも関わってたっけ?」
俺の知る彼女は、いつも冷静でとても賢い。
それに、人と群れるのを嫌う一匹狼だったはずだ。俺たちを除いて。
「いいや、違うよ。それとウチ聞いたことあるんだ。
雅が最近、男バレのファンクラブに目ぇつけられてること」
「「はぁ?!」」
ハモった。それはもう見事なくらい。
顔も、皆一様に眼を見開いて。
「楓、それ本当なの?!」
「そうみたいだよ。同じクラスの子が言ってた」
「ねえ、それってマズくない…?」
ざわざわと、不穏な空気が漂う。すると、突然のことだった。
「……何か聞こえる」
場を制するかの様に、八神迅は言い放った。
「え、ほんと?」
「とりあえず静かにしてみようぜ」
その一言で皆一斉に動きを止める。
少し経ってから、女子特有の高い声が耳に入ってきた。
「〜〜。〜〜‼︎」
言っている内容までは聞き取れないものの、語気が強い。まるで、一方的に誰かを責め立てているみたいだ。
すると、視界の端で誰かが立ち上がった。
「この声、体育館裏からだな。ボクちょっと様子見てくる」
保科錬登は少し早口で言った後、ここから立ち去ってしまった。
どことなく冷たい風が、辺りを吹き抜けていった。
「やっと終わった!」
俺は両手を上に突き上げた。
昼休み開始から、既に5分が経過していた。
やっと社会の授業が終わったのだ。
「蒼大くん、早く行こう!」
同じクラスの女バレ、宮塚桜に声を掛けられ、弁当を持って大急ぎで中庭へ向かった。
「んもう、遅いわよ! 蒼大に桜」
中庭に着くなり、滝本伊織からお叱りを受けた。いつもはもっと早く着いているからだろう。
「ごめん伊織ちゃん……」
「さっきの時間社会だったからなぁー」
「あ、太田先生でしょ?あの人50分で授業終わらせられないもんね」
そう共感してくれるように言うのは、池内莉子。マジいい人。
「あとは雅だけだね」
……本当だ。今日は俺たちだけでなく雅も遅い。何かあったのだろうか。
「おい雄輝。何故雅と一緒に来なかった」
杉崎秀介が眉間に皺を寄せた。それとは対照的に、問われた雄輝はポカンとしたマヌケヅラだ。
「……んーとな、何か他の女子に話しかけられて、そのままどっか行った!」
「こんのアホが!!」
「痛え!!」
答えが返ってきたと同時に、パァンといい音が。もちろん秀介が雄輝を叩いたのだが、このかけ合いは日常茶飯事である。
……あれ?
「他の女子とどっか行った?雅ってそう誰とでも関わってたっけ?」
俺の知る彼女は、いつも冷静でとても賢い。
それに、人と群れるのを嫌う一匹狼だったはずだ。俺たちを除いて。
「いいや、違うよ。それとウチ聞いたことあるんだ。
雅が最近、男バレのファンクラブに目ぇつけられてること」
「「はぁ?!」」
ハモった。それはもう見事なくらい。
顔も、皆一様に眼を見開いて。
「楓、それ本当なの?!」
「そうみたいだよ。同じクラスの子が言ってた」
「ねえ、それってマズくない…?」
ざわざわと、不穏な空気が漂う。すると、突然のことだった。
「……何か聞こえる」
場を制するかの様に、八神迅は言い放った。
「え、ほんと?」
「とりあえず静かにしてみようぜ」
その一言で皆一斉に動きを止める。
少し経ってから、女子特有の高い声が耳に入ってきた。
「〜〜。〜〜‼︎」
言っている内容までは聞き取れないものの、語気が強い。まるで、一方的に誰かを責め立てているみたいだ。
すると、視界の端で誰かが立ち上がった。
「この声、体育館裏からだな。ボクちょっと様子見てくる」
保科錬登は少し早口で言った後、ここから立ち去ってしまった。
どことなく冷たい風が、辺りを吹き抜けていった。
