「売店?うちもつき合う」
梨々香の右手には、シャネルの財布が握られている。社会人の彼氏にプレゼントされたんだって。
「うん、いっしょ行こ」
梨々香に答えながら、遠ざかる雪を横目で見送った。
「あ、二組の雪だよね?雨弓、雪担(*雪人のファンの意味)だっけ?」
にやにやと、からかうような笑みを浮かべる梨々香。
バレないようにしたつもりだったのに、見つめてたことが梨々香に気づかれてる。
「べ、別に……」
「だよね~。雨弓は理想のタイプが太宰治っていう文学女子だもんね。それが寄りによって『ナンパボーイズ』のファンなわけないか!」
当然のようにひとりで納得する梨々香。突っ込みたいことは多々あるものの、黙っておいた方がよさそう。
でも、ほんとにファンじゃないよ!
"ファン"では………………ない。

