「いや…っ、いやいやいーですここでっ」
と床に正座すると、雪は隅の冷蔵庫から飲み物と、なにか四角い箱を持ってきた。
「床、冷たくない?」
「大丈夫っ!私、床大好きだから!……てか、それなーに?」
「……ン?きのう虎に貰ったんだ。シュークリームだってさ。食べる?」
「へ、へぇー」
(虎っていうのは"あの"虎くんのことだよね?)
甘い香水を漂わせ、見かけるたびにちがう女子が隣にいる。だから陰では、"学校一のチャラ男"なんて言われてる。
でもわりとソフトな雰囲気だし、優しそうだけど…………とにかく軽るそーーーな人。
「でもなんか意外だね!虎くん、シュークリームくれたりするんだ!」
「つーか、虎が女の子に貰ったんだよ。それがオレに回ってきたの」
「…あ、そうなの?」
「ここに住んでる奴らって、なんだか知らないけど、やたら女子にお菓子とか貢がれるのね。そんでそれがよく回ってくる。おかげで甘いものには困らない」
(ここに住んでる人たちって…"ナンパボーイズ"のことだよね)
それってモテるからだと思う。
それにきっと貢がれるのは、お菓子だけじゃない気がするな……。
「ねえ雪は?雪も女子からプレゼントされたりする?」
「………」
私にしては、けっこう勇気だして訊いたのに、雪は答えない。
「ねえ、雪……」
「雨弓ちゃん……」
「ん?」
「雨弓ちゃん、オレにくれないしー」

