「じゃあ、ごゆっくりね~♪」
「覗くなよ?」
笑顔のままヒラヒラ手を振るその人を、振り向きざま軽く睨んで、雪は一階の奥へ進んだ。
私もそのあとに続く。
「ね、いまのひと誰?ここに住んでるの?」
「管理人。難破大湖(なんぱだいご)っていうの」
「そうだったんだ!……あ、だからここ"難破荘"って言うの!?」
「うん」
"売れない小説家"じゃなかったか。
「じゃあさっきの人、家族でここに経営してるの?」
「ううん。アイツだけ。なんかアイツのじいちゃんがここを始めたんだって。それをアイツが継いで……よく知らないけど、ひとりで住み込み管理人やってる」
「ふーん、そうなんだぁ」
話をきいてるうちに、雪は突き当たりの部屋のまえで足をとめた。

