私はひそかに唾を飲みこむと、意を決し、雪に続いた。

「けっこう、広いんだね」

例えるなら古い温泉宿のような玄関だ。それに案外なかは綺麗で驚いた。

スニーカーを脱いでいると、

「よっ。雪ちゃんお帰り」

とつぜん玄関のすぐ横にあるドアが空いて、その部屋から男の人が顔を出した。

「ども」

「珍しいねー。雪ちゃんが女子をお持ち帰りなんて?」

にこにこと愛想よく笑う男性。ぱっと見た感じ20代半ばから30才くらいかな?

無精髭がやや気になるけど、なかなかの男前さんで面食らう。

(誰だろ!?ここって社会人も住んでるのかな!?……なんとなく、"売れない小説家"っぽい……)