「ね、ねぇところで雪は、女子と"こんなこと"したことあ……」

「さぁーてと。そろそろ行こっか?遅れたら雨弓ちゃん怒られちゃうでしょ?」

私の話をさえぎって、雪は立ち上がるとお尻をパンパンと叩いた。

(なんか、ズル!)

誤魔化された気がする。

私が唇を尖らせると、雪は手を引っ張りながら話をかえて、

「そうだ。今日うちに来なよ。ね?」

と、女子みたいにふさふさの睫毛を瞬かせ、私を覗きこんだ。

そのとろんとした瞳に、至近距離で見つめられたら、たちまち魔法にかかっちゃう。

考える前に『うん』と言いそうになり、ハッと我にかえった。

(え!?……"うち"って言った!?)

「雪の家…って、あの"難破荘"だよね?」

「うん、"あの難破荘"」

不安がよぎる私に、雪はニヤリと白い歯を見せた。小悪魔の表情で。