「…………ん?」
なにか伝えたそうに、じっと見つめらる。
ただそれでも心臓は鷲掴みにされたようにドクンっと跳ねあがった。胸が苦しいのに、幸せ。
「雪………っていつもいい匂いがするね……」
「ふつうじゃない?」
「ううん、ふつうじゃないよ。ほかの男子よりいい匂いがする。ほかの男子より優しいし。……あと、一緒にいると楽しいし……」
一緒にいるだけで幸せ……なんて、さすがに言えないから、すごく遠回しな言い方をしてしまった。でも、なぜか雪の顔がかすかに陰った。
(あれ…?)
「いま"誰か"と比べた?」
「……え?」
「"ほかの男子"って誰のこと?」
「…………だ、誰のことでもないよ?」

