雪はいつの間にか、私を『雨弓ちゃん』と呼ぶようになった。
独特の余韻が残る声でよばれる度に、お腹の内側をくすぐられるような気持ちになる。
そして、私もいつの間にか『雪』って呼んでいた。
初めてこの準備室にふたりで来たのは1ヶ月くらい前。
最初はすこし間をあけて座ったけど、だんだん雪との距離が近づいて――…
って言うより雪の方が近寄ってきて――…
手を繋ぐようになった。
そのとき感じた。自分が雪を好きだ…ってことを。
だけど会うのは、この準備室だけだし、別に「付き合って」とは、お互い言ってない。
だから正直、こんな甘い空気を出されても……雪が私をどう思ってるのか分からない。
私って、雪のなんなのだろ……?

