すると少しふて腐れた顔で、
『本くらい読むっつの。バカにしないでよ』
『そ………なんだ………ごめん』
『面白かったよそれ』
『…そ、そう?私は途中までしか読んでいなくて…』
『結末教える?』
『!?い、いいよ言わないで!』
ここで雪が、はじめて笑った。
それが意外にも可愛くて、不覚にもときめいちゃって。話してみたら、思っていたイメージとまったく違う男子だった。
なんか、眩しいな……この人。
こういう目立つ人って、教室のすみで読書してるような女子を、バカにしてるんじゃないかと思ってたから。
『あ。勝手に借りたお詫びに、今度なんか貸そうか?』
『え、ほんと?』
『オレは横溝正史とか。江戸川乱歩とか夢野久作とか、ミステリ系が好きなんだけどね。歌野晶午なら、あれ良かったよ、"葉桜の季節に君を想うということ"』

