ナンパボーイズ




と、気だるそうな顔で、そっと差し出してくれたのは、なくした歌野晶午の『絶望ノート』だった。

『……あっ』

『先週、理科室の机で見つけた』

『……!』

そっか!理科室に忘れたんだ!
うちのクラスの授業のあとは二組だったな。北原雪人と同じ机使ってるんだ。

でも色んなことに驚いて、とっさに声が出ずに固まっちゃった。

だって、だって、あの北原雪人が私の前に立って、しかも話しかけてくるなんて!

コチコチになっていると、雪が甘える仔犬のように不安気な表情をみせた。不覚にもドキッとしちゃって……焦った。

『あ、ああああありがとうっ…!でも、なんで…一週間も経って…?』

『面白そうだったから読んだ』

『……え?……本、読むんだ……き、北原くん…』

意外だった。

"読書"は北原雪人のイメージじゃなくて、つい思ったことが口から出ちゃった。