私が、(自分の)優香じゃないと気づいてからは、もう見ようともしなかった。

でも私は、その背中が体育館の壁を曲がって、見えなくなるまで目を反らせなかった。

とーたが消えると、涙がぽろっと落ちた。

(…なんであんな冷たい男が好きなんだろ…?私を、これっぽちも好きじゃない男………優香の為になら、あんなにキレるのに………)

嫉妬するのもバカバカしいくらい、すべてが空しくて、まさにどうでも良くなった。

虎の言うとおりだ。とーたの心は優香のもので、私の入る隙なんか1㎜もない。

そんなことは気づいてた。ただ認めたくなかっただけ。……けど思い知らされた。

(完敗……)

そんな私の肩に、虎は手をおいてくれた。

「心がわりの相手ならオレにしろよ?」