「いや、さっきからあんた、何言ってんだ?」

知り合いか? と、尋ねる女性に、少女は首を横に振った。

「なんだか、探してる人とわたしが似てるらしくて……。
勘違いしてるみたい」

困惑の表情を美しくも愛らしい顔に浮かべて、少女は言った。
それでも青年は、引き下がらない。

「姫っ! 勘違いなどではありません!
私が姫を見間違えるはずがありません!

お忘れですか、幼少の頃をっ!

ベル姫様、思い出してください、私を、貴女様の国を!」

女店主の肩が、ぴくりと小さく震えた。

「お前、どうして……?

とりあえず、話がある。
今日の営業が終わるまで、どこかで待ってろ」

「どこかで、だと?!
やっと逢えた姫と、また離れてろと言うつもりか?!
それも、姫をも働かせて!」