ジェミロの舌打ちが、静かな店内に響く。

当時の記憶がよぎり、青年の顔は曇った。
ベルは眉をしかめてはいるが、何も言わない。

「結局、政権を争っていた者達は共倒れ、とでも言いますか……。
恐らくですが、一人残らず死にました。

そして、一部の民達は、どうにか国外に逃げ出しました。
そうして生き残った僅かな人々が、どこかの空の下にいる。
それだけが、唯一の救いです」

血で血を洗う内部戦争で、地図に載ることすらなくなった、滅びし小国、ラス王国。
三人はその悲しい小国にそれぞれ想いを馳せ、しばしの沈黙が流れた。

「……で?
お前は結局何者だ?
ベルの、何なんだ?」

沈黙を破ったのは、ジェミロの一言だった。