「城に謀反者が潜んでいたのです。
厚い信頼を得ていた男でした。
悠々と姫を連れ去り、国が大混乱に陥りました……」

「姫が消えて、国が大混乱……か……」

ジェミロは呟き、酒を口に運ぶ。
カラリと氷が鳴る。

「女王様と先代ナイト様のお子は姫お一人でしたので、ゆくゆくは女王になるはずだったのです。
姫は、将来を照らす国の光であり、宝でした。
清らかで特別な輝きと、愛くるしい表情で、国中の者から愛されておりました」

「そりゃあ、国の宝が行方不明じゃ、大混乱かもな」

また一口、酒を含みながらジェミロは相槌を打つ。
ベルはじっと黙って聞き入っている。

「姫の行方が知れず、その上政権争いまで起こり、女王様もナイト様もご心労でお倒れになり……」