「姫、こちらをご覧下さい」

次に広げられたのは世界地図だった。
見慣れた国の地形、名前が、各々の場所に納まっている、なんの変哲もない地図だ。
古いからか、多少地形が曖昧だったり場所がずれていたり、今は統一された一つの国が分かれていたりはするが、それ以外は何ら気にならない。

「ただの古い地図じゃねぇか」

「右下だ、よく見ろ」

「うわ、マジか……」

言われてみれば、右下には海に囲まれた小さな国が一つあった。
その国の上に、ラス王国と記されている。

「穏やかで、人々の笑顔に満ちた、平和で裕福な国だった。
あんなことがあるまでは」

「あんなこと……って……?」

何かを思い出したのか、苦々しい顔の青年に、ベルは警戒しながらも自分から話しかけた。
青年はベルを見つめ、続けた。