「女、丁重に扱え!
それはこの世に一枚しか存在しない、大変貴重な品だ!」

「へーへー、わかりましたよ。
で、これは?」

肖像画を包みの上に戻し、今度は硬貨を手に取る。

「今は無きラス王国の硬貨だ」

「なるほど、確かにラスって書いてあんな。
知らない国だ」

テーブルの上のライトにかざし、硬貨を表裏観察する。

「今はないと、8年前に消えたと、言ったろう」

ジェミロは硬貨をピン、と弾いて器用にキャッチすると、それをベルに投げた。
慌てて受け取ったベルは、じっとその硬貨を見つめる。

「見覚え、あるか?」

「……分からない、けど……。
知らないことも、ないかも……?」

曖昧なことを言いながら、ベルは硬貨をそっとテーブルに置いた。