「姫、裏をご覧下さい」

言われた通りに、少し震える手で裏返す。
裏には丁寧に
「ベルベーネ姫、6歳のお誕生日に」
という覚書と、その下に絵師のサインと年代が記されていた。


「あ……」

ベルベーネ。
初めて出会ったとき、ジェミロは幼き少女に確かにそう自己紹介された。
それ以来はニックネームとして、ずっとベルと呼んでいるし本人もそう名乗っているので、ベルの本名を知る者は、この土地にはジェミロと本人の二人だけだ。

「……。
この少女が当時のベルだということは、間違いないようだな」

「う、うん……」

肖像画を手に取り、しげしげと見つめながら、ジェミロはグラスを傾けた。