ジェミロはカウンターに置かれた金額を回収しながら、目の前の青年に話しかける。

「もうちょっとで片付け終わるから、それまで待ってろ」

そっけなく頷く青年に、ベル以外には本当に無愛想だと、ジェミロはつくづく思う。

開店直後に女を振ってからというもの、青年に話しかける者は少なからずいた。
容姿に惹かれて声をかける女、夕方の事件について知りたい男、見ない顔だと興味を示す者。
それら全てを、素っ気なく対応した。
振られた女だけでも、5人以上はいただろうか。

「ベルは先に部屋に戻ってろ、あたしが話しをする」

「ダメだよ、おねぇ。
あの人、おねぇにまた何かするかも知れないし……。
わたしも、一緒にいるよ」

心配そうにこちらを見上げる妹の頭を優しい手つきで撫でながら、ジェミロは首を左右に振った。