今まで、記憶を失ったベルには、ジェミロとの生活が全てだった。
ベルを失ったレイも、ベルを探すことが全てだった。

レイのベルと再会という願いは叶い、ベルの町娘として生きるという願いは叶わない。
泣きじゃくる彼女を見つめながら、レイはひたすら頭を撫でることしか出来なかった。

「ただいま~って、お? 泣き虫姫の復活か?」

買い物袋を大量に下げたメロゥが戻ってきて、ベルを見るなりけけっと笑った。

先程より落ち着いてきたとはいえ、彼女は瞳にうるうると涙を溜めている。

「ちゃかすなよ、メロゥ」

ベルの頭を撫でる手を止めることなく、じとりとメロゥを睨むレイ。