「……無理して笑うなって。
こっちまで泣きたくなっちまう」

ベルの不安を汲み取って、頬に手を添えたジェミロが、眉を八の字にして彼女を見つめる。

「おねぇ……。遊びに来るからね、絶対に」

「おお、いつでも来い!

今生の別れでもあるまいし、近いんだろ?
暫くしたら遊びに来れるさ。

そんな顔するなって」

「うん、おねぇ……。
行ってきます……!」

言って勢いよく抱きつくベルを、ジェミロはおっと、と小さく声を漏らしながら受け止めた。

「いってらっしゃい。
ベル、ここはお前の実家だ。
あたし達は家族だ、絆は永遠だ」

心配するな、と背中を撫でる。

「うん、うん……」

「見てると俺らまで泣いちゃいそうだ……」

「水を差すようで悪いけど……。
ほら、ベルちゃん、そろそろ行かないと」

「うん……」

済まなそうに声をかける男2人に返事をして、ベルは姉の腕から離れてた。

「ベル、行こう」

「うん」

名残惜しそうに店内をぐるりと見つめ、じっと姉の姿を脳裏に焼き付けて、ベルは店を出て行った。