「ははっ! そのおかげでアンタ、今日も旨い酒が飲めてんだろ!
あたしのタフな心臓に感謝しろ!」

「違ぇねぇ!」

向かい合う二人は、ガハハ、と豪快に笑いあった。
豪快な男の隣に座っていたこれまた常連客の女もうふふ、と笑う。

「それにしてもあのお兄さん、随分といい男だったじゃない?」

「まぁなぁ、あんないい男は滅多にいるもんじゃねぇな」

俺にはかなわねぇけどよ、ガハハ、と笑う男を、女二人は無視して続ける。

「あいつなら、そこにいるぜ?」

見ろよ、と、調理中で両手が塞がっているジェミロは顎でカウンターの隅をさした。

「あら本当! 私、口説いてみようかしら?」

「いいんじゃね~か?
ベルしか見えてねぇみたいだから、多分撃沈だろうけどな」