急いでそれらを平らげ、椅子にかけていた薄手の上着を羽織る。
感慨深くじっくり食べたいところだったけれども、目の前の2人を待たせている。

「おねぇ、ごちそうさま。
やっぱりこのサンドイッチ凄く美味しいから、店のメニューにした方がよいと思うよ?」

皿を下げながら、以前何度も言った言葉を口にする。
ベルはこの姉特製のサンドイッチが本当に好きだし、どうしてジェミロがこんなに美味しいサンドイッチをメニューにしないのか分からないほどだった。

「ははっ! 今日はいつもとちょっとだけドレッシングを変えたんだ。
もしかしてあたしの目指すとこにたどり着いたかもな?
そんなに好きか? なら観念して店に出そうかな? ベルサンドって名前にして」

冗談を交えながら笑顔で会話をする。

「うん、そうした方が良いよ。
絶対人気出るからね。
でもベルサンドって名前は恥ずかしいかな?」

ベルは、泣き出しそうな気持ちを抑えて笑った。

この笑顔も、サンドイッチも、店での仕事も……。
記憶をなくしてジェミロを姉と慕い過ごして来たベルには、全てだった。
全てを手放して、新しいことを……。