青年から怒気が伝わる。
強気の女店主も、その大きすぎる怒気に、ひるんだ。

「ふざけるなっ!
女、今すぐ姫を私の元に戻すのだ!」

ますます膨らむ怒りの気に、少女はそっと姉の後ろに隠れた。
ひるみながらも少女を守るように立ちふさがる女店主。

「怖がってるじゃねぇかバカ野郎!
話しは聞いてやるって言ってんだ、待ってやがれってんだよ!」

「何だとっ!!」

青年はすっと剣を腰の鞘から引き抜き、構えた。
その一連の動作は滑らかで隙がなく、素人が見ても彼の剣の腕前が非常に高度であると、理解出来るほどだった。
狂気を手にしていると言うのに、恐ろしくも美しい程の立ち振る舞い。
周囲も、標的にされている女店主も動けないほどに魅入られた。

「姫に数々の無礼、死を持って詫びろ、女」