敦くんが予定調和で教室に入ってきた時、私は確信した。
敦くんのことを100%信頼できる……と。
しかし、この「坂本香澄死ね!」を見てしまっては、それをほくそ笑んで書いている敦くんの横顔を見てしまっては、信頼が薄れていく。
氷が溶けて薄まったカルピスのように。
「それでいい。」私が黙っていたところに敦くんがそう言った。
「それでいいんだ、香澄さん。人を簡単に信じちゃいけねえ。疑うんだ。そして、その疑いに敢えて乗っかったフリをしていればいい。オレたちは確かに運命共同体だが、お互いがお互いを信頼しちゃいけねえんだ。お互いに腹の中を探り合う。それほど慎重なほど、クールに物事を捉えることが出来る。不測の事態にも。」
敦くんのこの言葉で確信した。
敦くんは、私を初めから信頼どころか、信用もしていなかったということを。
これは裏切りなのか、それとも利口なのか。
わからないけど、少なくともその2つを兼ね備えた生き方は、矛盾しないと思う。



