「さて、それじゃ早速ソワレと行こうか。」
そう言って、敦くんはロッカーから降りて、黒板の前に立った。
「ソワレ?」
「夕方以降の舞台公演のことさ。ンなことも知らねえのに、よく劇団の座長なんかやってるよな。」
「じゃあ、逆に日中の公演はなんて言うの?」
「マチネ。」
敦くんはチョークを手に、黒板に大きく「坂本香澄死ね!」と書いた。
チョークを横にして、野太く、力強い「死ね!」は、私に対する敦くんの本心のようにも感じられた。
「自作自演……だよね?」
思わずそう訊いてしまったことに、後悔した。敦くんは、月明かりに照らされた横顔を向けて、ニヤリと笑った。
「思わず本心かと疑ってしまうほど、上手く書けたか、或いは……。」また一拍置いた。
「オレを信頼していないかのどっちかだ。なあ、そうだろ? 香澄さん。」



