「どうしてわかったの?」
「フッ。アナタ、意外と正直なのね。」北條さんはポケットから細いタバコを取り出し、金色のライターで火をつけた。
「賢明よ。」
彼女の吐いた煙が風に漂って、私のブレザーにふわりとかかる。
「まず一番にわかったのは、青山くん。彼の字は中学の時から変わらない。彼の文字は、左はらいが長めなのよ。それも憎たらしいほどにね。」
筆跡……。盲点だった。
「そして、次は野崎くん。彼の文字はよく知らないけど、青山くんじゃない、男の書きそうな文字が混ざってた。いつだったか、アナタに対して毒ついたことがあったわよね? それに加えて今朝の『死ねよ、ブス。』だもの。本来、そういうことを言わない人がここ最近になって、急に毒つくんだもの。ピンと来たわ。」
敦くんの急な変わり様は、不自然に写ったのか……。
「そして、あと1人は、筆跡で女子だということはわかった。丸文字だもの。でも、それが誰かって考えても、思い付かなかった。このクラスにはそんなことをしそうな女子はいないもの。いないことの証明は、いることの証明よりも難しいって言ったわよね? いないことを証明するには、アナタが犯人である可能性も考えなければならない。すると、納得するヒントがあった。」
「納得する……ヒント?」
「そう。アナタの名前。『坂本香澄』って名前よ。」
最後の煙を吐いて、北條さんはタバコの火を消した。



