「眠りから覚ますのは、何も殴るだけじゃないのよ? 冷静になりなさい。クール、クール、クール……。そう、クールになりなさい。」
敦くんは、また呆気に取られたような顔を浮かべたが、私の「クール」というワードを聞いて、字義的にそれを捉え、深呼吸をして。
「クール。ああ、そうだ。その通りだ、香澄さん。オレはイカレちまってた。不測の事態に対応するには、クールでなきゃいけねえ。自分で言っておいてなにをやってんだろうな、オレは。」
私のファーストキスを奪わせておいて、随分な言い様だ。
でもいい。横柄な態度。ケルアックの小説に出てくるような狂った青年。それが本来の敦くんなのだ。
敦くんは、頭のキレる天才的な頭脳を持っている。冷静さを取り戻せばきっと上手く事が運ぶ。
「信頼しちゃいけねえ。」と敦くんは言ったけど、その一部分だけは、信頼している。
だから、捧げた。私のファーストキスを。
別にしたかったわけじゃない。でも、イケメンを前にして、この状況で、キスをすることはおかしくない。自然だ。



