と、その時。
「実夕っ」
「えっ?」
勇斗に呼ばれて顔を上げると、勇斗はニヤッとした。
そして、握っていた勇斗の手に突然力が入れられ、私の手は一瞬でテーブルについてしまった…。
「……なっ…」
一瞬にして……負けた。
「へーい、俺の勝ち~」
勇斗はにこやかな笑顔をしている。
私は自分の手を見た。
今まで感じた事のない力、そして大きくなった勇斗の手…。
「はぁ―…もういい」
私はそう言うと、流し台に向き直し片付けを始めようとした。
「おーい、どけっ」
「はっ…?」
「俺が片付けるよ、食べたお礼だからなっ」
勇斗は少し優しい表情を浮かべながら、そう言ってくる。
「べ…別にいいわよ、私が頼まれたんだから」
「いいんだよ俺は慣れてるから、家事とか」
「…でも…」
勇斗のお母さんが仕事に行ってる間、勇斗はすっかり家事をこなせるようになったらしい。
全然イメージじゃないのに…。
「じゃあ代わりにって訳じゃないけど、英和辞典貸してくれない?俺の学校に忘れてきてさぁ―」
「別に…それぐらいいいけど」

