Drinking Dance

「な、な、な…」

おいおい、歌ってる場合じゃないぞ…。

なかなか名前を呼ぼうとしない星崎さんに辟易していたら、
「直子さん!」

いきなり大きな声で名前を叫ばれたので、私は椅子から転げ落ちそうになった。

周りにいた客も何事かと言う様子で私たちの席に注目した。

星崎さんはゼーゼーと長距離を終えた選手のように肩で息をしていた。

「稔さん、場所を…」

呟くように言った私に星崎さんはハッと我に返ったらしく、慌てて首を動かして周りを見た。

「す、すみません…」

場所に気づいた星崎さんは小さな声で謝った。

もう、山に登ってるんじゃないんだから…。

私は息を吐くと、ストローで抹茶ラテをすすった。