川口さんの表情は、判り易す過ぎるぐらいに、
どんどんと曇っていった。
テンションが上がり切っていただけに、ショックも大きいだろう。
でも、彼女には残念ながら、断る理由はない。

私は川口さんの気持ちを知りながらも、何も言わなかった。それどころか、内心、安堵している。

我ながら嫌な女だ。

「もうちょっと、展示会のレクチャーをして欲しかったんですけど、打合せの方が重要ですもんね。分かりました。」

生田君の思わぬお願いに、自分自身を納得させるためなのか、小さな抵抗を口にしながらも、逆える筈もなく、私の座る予定だった席に着いた。

生田君は、それに対して、何も答えない。

「川口さん、ごめんね。」

『決して、自分が選ばれなかった訳じゃない。これは仕事だから。』と言わんばかりに、一瞬、私に敵意の視線を向けると、黙って席に座った。

ふと、奈緒子の言葉を思い出す。

『川口さんには気を付けて』