3度目のFirst Kiss

翌朝、眠たい目を必死に擦り、いつもより濃い目のコーヒーを飲みながら、出勤の準備をする。

家を出てからの駅までの道、電車の中、いつもの喧騒が嘘の様に静かだ。
少し開いた窓から流れ来る風、少しづつ明るさを増していく車窓を見ながら、ひと時の居心地のの良さを感じた。

会社に着くと、正面玄関はまだ開いておらず、私はビルの裏口からIDカードを使って入り、営業部のある7階に向かう。

営業部には、きっと、誰もいないだろうと思っていたのに、人影があって、心底、驚いた。
今日、私が乗った電車は始発だったのに。

私の姿を見て、相手も驚いている。
それは、生田君だった。

「おはようございます。」

「おはよう。今日は、朝、早く目が覚めたから、早めに来てみた。」

聞かれてもいない言い訳をしながら、私は自分の席に着いた。

普通は、早く目覚めたからと言って、定時より2時間以上も前に出社する人なんていないだろう。

本当は先に奈緒子の仕事を片付けようと思っていたけど、私は先に来月のイベント資料を作成し始めた。

部屋には、私と生田君のパソコンを打つ音だけが響いている。他に邪魔が入らないこの時間は、仕事を思った以上に進めてくれた。

資料が出来上がる頃、私の個人携帯がブルブルと震えた。
画面を見ると、矢沢さんからだった。

もう8時かあ。