3度目のFirst Kiss

「広瀬さん、着きましたよ。」

私は、生田君に手を握られ、軽く揺すられていた。

「あっ、ごめんなさい。私、寝ちゃってた。生田君の方が疲れているのに。」

「いえ、俺は、広瀬さんの寝顔が見れて、ラッキーでした。もし、今度、広瀬さんが熱を出したら、俺が看病してあげますね。」

その冗談にさえ、ドキドキする。
確かに、大人になった今でも、熱がある時には、誰かに側にいて欲しくなる。

私の手は、まだ生田君に握られたままだ。

生田君の冗談と本気の境目が、分からない。

その温かい手を握り返してしまいたくなる衝動を抑えて、私は、自分の手をそっと引き抜き、車から降りる準備をした。

「今日は、送ってくれてありがとう。帰り、気を付けてね。お休みなさい。」

私は車を降りると、走り出すのを見送った。
生田君は、1度だけ小さくクラクションを鳴らして走り去った。

流石の私も、生田君の私に対する言葉や行動に、
何も感じない訳ではない。

もしかしてって、期待している自分もいるのが本心だけど、生田君には彼女がいる。

その事実が私の全てを否定する。

それに、私は、恋愛に対して臆病になってしまう理由が他にもある。

もう、3年前の様に、傷付きたくはない。