3度目のFirst Kiss

その時、私の社用の携帯が鳴った。
きっと、生田君だ。

「はい、もしもし、広瀬です。」

生田君はマンションの下まで来てくれているようだ。

「迎えに来てくれて、ありがとう。今から、降りるね。山根さんの彼氏も来てくれたから、もう安心だし。」

私は電話を切ると、奈緒子と矢沢さんの方に向き直った。

「じゃあ、私は、これで失礼するね。矢沢さん、後はよろしくお願いします。」

「あっ、王子様のお出ましですか。よかったですね、先輩。」

奈緒子は、ニタニタと含みを込めた言葉を私に向ける。

「あの生田さんか。」

まさかの矢沢さんまで、生田君の名前を呟いている。どうして、矢沢さんが生田君の存在を知っているのか。奈緒子は、いったい、どんな話をしてるんだろう。

立ち上がろうとする奈緒子を制して、私は、奈緒子の部屋を出た。

玄関を出ると急ぎ足でエレベーターに向かい、思わず、ボタンを連打してしまった。

奈緒子と矢沢さんに刺激されたのか、私は、無性に生田君に会いたくなっていた。

彼は、ただの同僚なのだけれど。