幸い医務室にはまだ、看護師の野村さんがいてくれた。 
私が声を掛けると、直ぐに奈緒子の様子に気付き、
彼女に優しく手を差し伸べてベッドに誘導してくれた。野村さんは、とても優秀で的確な判断をしてくれる。

「だいぶ、顔色が悪いわね。熱もありそう。一応、
体温を測ってみて。」

彼女は、奈緒子に体温計を渡す。奈緒子は、素直にそれを脇に挟んだ。もう、拒むことは諦めた様だ。

「ピッピ」と体温計の音が鳴る。見ると38度を超えている。

「間違いなく過労ね。働くのもいいけど、何でもやり過ぎはダメよ。取り敢えず、薬を飲んでベッドでゆっくり休みなさい。私も今日は、たまたま、まとめなきゃならない書類があるから、ゆっくり休んで大丈夫よ。」

それが本当かは分からないけど、野村さんは奈緒子が気を遣わないでいい様に、そう言葉を掛けた。

奈緒子もそれに静かに頷いた。

「奈緒子、3課のリーダーには、私から報告しておくからゆっくりしててね。帰りは、私が送るから、ちゃんと休むんだよ。後で、奈緒子の荷物も届けるから。。」

野村さんがいてくれれば安心だ。彼女にお礼を言って、社内携帯の番号を伝えると、急いで営業部のフロアに戻った。