生田君は絶対、覚えてないけど、彼とキスをするのは、実は2度目だった。
生田君の歓迎会で、彼はベロベロになるまで飲まされて、その時、彼を駅前のタクシー乗り場まで連れて行ったのが私だった。

もう、3年近く前のことだし、あれは完全に事故だった。

だから、私は、何もなかった様に、生田君とは接して来た。彼も覚えていないから、当然だけれど、次の日に謝罪の言葉はあったけれど、それはきっと酔っ払って迷惑をかけた事への謝罪だろう。
彼の態度が変わる事はなく、今に至っている。

これから先も、この話をすることはないだろう。

ただ、今日のは違う。
田崎君に見られて、みんなに知られた以上、
ちゃんと蹴りを付けなきゃいけない。
私の気持ちが本当に走り出してしまう前に。