日曜日の昼過ぎ、私は奈緒子ととある公園の中にあるカフェにいた。
天気も良くて、風が気持ちいい。

ただ、今の奈緒子にはそれはあまり関係ないらしい。

私と川口さんの昨日のやり取りを話すと、さっきからずっとお腹を抱えて笑っている。

「ねぇ、いつまで笑ってるの。やっぱり奈緒子には言うんじゃなかった。」

「だって、こんな面白い話がありますか?
中学生って!川口さんも良く分かってるわ、先輩のこと!それで、先輩は何て返したんですか?」

「何も言ってない。言い逃されたから。」

「言い逃された?益々、面白いです。」

奈緒子は遂に涙まで流している。
他人事だと思って。

「で、先輩はどうするんですか?生田君のこと。
もう、生田くんの気持ちにも気付いてますよね。」

「分からない。」

「いや、ほんとに中学生だわ。いつまでそうやって、逃げてるつもりですか。」

「だって、彼女いるし。この間の居酒屋の件だってあるし。」

「いや、その生田君からキスされたんですよね。」

「でも、勢いって言われたし。酔っ払ってたし。
あんなの私を揶揄うための悪ふざけだよ。それなのに、変な噂になっちゃうし。」

「先輩、中学生よりタチが悪い。中学生はもっと素直です。」

奈緒子は自分の鞄から携帯を取り出し、誰かに電話をし始めた。

「あっ、もしもし山根です。今回は本当に迷惑を掛けて、ごめんなさい。」

奈緒子の電話の相手が、彼氏の矢沢さんでないことは、はっきりした。

「だれ?」

私は口パクで奈緒子に聞く。

「ところで、お疲れだとは思んだけど、生田君は
今、何をされてますか?」

私の焦りなんて無視して、奈緒子は話を続ける。

「私は今、綾香先輩とランチをしてるんですけど、
綾香先輩が生田君と話があるみたいなの。だから、少し時間を作ってもらえないかと思って。」

「あっ、大丈夫ですか?ありがとう。
じゃあ、私は車なので、生田君の家の近くまで彩華先輩のこと送って行くね。また、近くなったら、連絡しますから。急に無理言ってごめんね。じゃあ。」

奈緒子は勝手に話を進めて、電話を切ってしまった。

「彩華先輩、もう逃げられませんよ。ちゃんと蹴りを付けて来てくださいね。」

「いや、何でそんな勝手に。」

頭がクラクラして来た。