私は、彼とは視線を合わさない様に、また下を向いた。彼が私をじっと私の方を見つめているのが、気配で分かる。

この状況は何?
悪いのは生田くんじゃない!

私は渾身の力を込めて、顔を上げ彼を睨み付け、出来る限りの冷静を見せかけて、彼に向かって言葉を放った。

「さっきみたいな事、もう二度としないでよね。本当に迷惑だから。」

生田君は一瞬、戸惑った顔をしたけど、すぐに元に戻ってさらりと応える。

「さっきみたいな事って、俺がいきなりキスした事ですか?」

「それ以外に何があるの?」

生田君は、自分がキスをすれば女は皆んな喜ぶとでも思っているんだろうか。

「確かに、いきなりでごめんなさい。」

いや、軽すぎる。

私にはもう意味が分からない。
あぁ、やっぱり世界が違う・・・。

彼にとって、キスなんて挨拶程度のものなのだろうか。