「どうしたの?話って?」

「はい、実は私、昨日の夜、生田さんの部屋に行ったんです。」

「えっ・・・。」

「告白しました。会社に戻ったら、こんなチャンスもないだろうって思って。」

私に、その結果を問う権利などない。

「見事に玉砕でした。生田さんには『好きな人がいるから。』って。」

「そう。」

「生田さんの好きな人が誰なのかは聞いてません。
噂の彼女なのか、広瀬さんなのか、それ以外の人なのか。」

「どうして、それを私に?」

「広瀬さんにはにはライバル宣言したから。別に広瀬さんに負けたとは思ってませんけど、一応、筋は通そうと思いまして。」

私に伝えることが筋を通すことなのかはよく分からないけど、彼女の勇気には完敗だ。

「私、今回の展示会、広瀬さんにはとても感謝していますし、尊敬もしています。社内の人達から信頼されてる理由も痛いほど肌で感じました。」

「ありがとう。」

「ただ、恋愛に関しては、『ずるい』と思ってます。失礼を承知で言いますが、いい歳して中学生みたいな振りをするのはやめて下さい。」

中学生??私が?

思わず、川口さんの顔をじっと見てしまう。

「そう言うところです。私は何も知りませんみたいな顔をするところです。」

「はぁ。」

「では、お疲れ様でした。失礼します。」

彼女は荷物をまとめると、さっさとカフェを出て行った。

取り残された私は、暫く動けずにいた。

まさか、10歳以上年下の後輩から、『中学生』と
言われてしまうとは・・・。

思い当たり過ぎて笑えないし。