川口さんの爆弾発言は私には衝撃的過ぎて、会社での状況が分からないから余計に怖くなり、手が震える。

奈緒子は今日は会社に出社したんだろうか。
奈緒子なら、状況を知っているだろうか。

でも、プライベートの携帯にも、彼女からの連絡はまだ入っていない。

私は、スーツを脱ぐ時間も惜しくて、急いで奈緒子に電話をする。

お願い出て!

数回の呼び出し音の後、菜穂子が普段通りのトーンで電話に出てくれた。

「もしもし、お疲れ様です。展示会、成功したみたいですね。ありがとうございました。」

「あっ、うん。無事終わったよ。あのね、ところで、今日、会社で何かあった?」

彼女のトーンとは違い、私は完全に狼狽えていた。

「どうしたんですか?そんなに焦って。もしかして、生田君との飲み会での話ですか?もう、そっちまで情報が入ってるんですね、凄いネットワークですね。」

奈緒子は妙に感心している。

「うん、さっき、川口さんから聞いたの。会社で噂になってるって。同期から、連絡が来たみたい。」

「そですか。先輩には、帰って来てから話そうと思ってたのに。皆んな、仕事でもそれぐらいのホウレンソウができれば、もっと仕事もスムーズに進むんですけどね。」

「そうだね。でも、どうして、そんな噂が急に出てきたの?あれからもう2週間は経ってるよね。なのに、何で、今更?」

「今更じゃないですよ。だって、生田君だし。ずっと、皆んな気にしてたんですよ。ただ、本人が強く否定したから、ずっと燻ってたんでしょうね。」

でも、誰も生田君のキスの相手が私だとは誰も想像もしてなかったはずだ。