部屋を出た途端、安堵感からか私の身体は小刻みに震えだした。今まで、緊張で張り詰めていた身体から、一気に力が抜けたからか。

生田君がそれに気付いてか、私の手をギュッと握ってくれた。
生田君の手も少し震えている様な気がした。
今の私には、その手を振り払うことは出来なかった。
その温もりに安心感を覚える。

「広瀬さん、ありがとうございました。今回は、本当に広瀬さんのおかげです。俺だけなら、あんな風には出来なかったな。正直、悔しい気持ちもあります。俺も頑張らなきゃな。」

「何言ってるの。私は生田君がいてくれたおかげで、すごく心強かったし、最初から、生田君に任せようと思ってたよ。」

生田君の握る手に更に力が込められた。

ただ、ここは展示会場だ。
私は、生田君の手を握り返した後、そっと手を離した。

「さぁ、仕事に戻りましょう。午後からのセッションの準備をしなきゃ。」

私は、余韻を振り払うように、本部に向かった。
それでも、生田君に握られた手は、まだ熱くてジンジンしている。